気化性防錆紙とは?使い方やメリット、錆を防ぐ仕組みについて
鉄は、何も養生しなければ時間とともに酸化して錆びてしまいますが、それを防ぐために使用するのが気化性防錆紙です。
これまで、鉄への防錆は工業用油を使用することが一般的でしたが、工業用油はコストがかかり、また、積極使用はカーボンニュートラルやSDGsの観点からも望ましくないため、防錆紙が環境貢献ができる合理的な素材として採用され始めました。
ここでは、その鉄を錆から守る環境にも優しい素材「気化性防錆紙」についてご紹介します。
目次
防錆紙とは?
防錆紙(ぼうせいし)とは、気化性の錆止め剤を塗布又は含浸した包装紙のことで、防錆紙=気化性防錆紙と捉えられています。
一般的には、金属の錆や腐食防止のための包装紙として使用します。
防錆紙に使われる紙の原料は、木材などから取り出した繊維「パルプ」で作られており、見た目はクラフト紙のような茶色い紙です。
防錆紙の種類
鉄などの製品を錆から守る不思議な防錆紙。この防錆紙は、表面などの加工の違いにより、主に大きく二つに分類できます。
気化性防錆紙
気化性防錆紙とは、紙に防錆剤を含浸させた紙です。
製品を梱包している間に、少しずつ防錆剤が大気の熱によって気化し、それが金属の表面を被膜して錆や腐食を防ぎます。防滑油等では塗布できない造作の細部まで気化性防錆剤が入り込むため、より広い範囲での防錆が期待できます。
特に近年ではニーズも高く、多くの鉄鋼の養生に使用されています。
接触式防錆紙
気化性防錆紙が生まれるまで、在来工法として使用されていた防錆紙が接触式防錆紙です。日本産業規格(JIS)では、鉄鋼などを密着包装したときに防錆性能があるものが接触式防錆紙として規定されています。
今日の鉄鋼製品は、多様なニーズにより形状が複雑なものが多く、接触式では包装で錆を防ぐことが困難なためニーズは少ないとされています。
気化性防錆紙の仕組みと使い方
防錆紙として広く認識されている気化性防錆紙の仕組みと使い方についてご紹介します。
気化性防錆紙は取り扱いが非常に簡単です。
一般的に、気化性防錆紙はシートやロール状になっていて、対象となる金属製品を包装したり、密閉空間に挿入したりすることで防錆効果を得ることができます。
防錆油のように、製品への塗布や拭き取りが不要であるため、作業コストを大幅にカットすることができます。
気化性防錆紙を使用するメリット
金属製品の保存や輸出入時の梱包に使用することで、製品を錆から守る気化性防錆紙。具体的に使用するとどのようなメリットがあるかをご紹介します。
気化性防錆紙のメリット1:錆びない
その名前の通り、大きなメリットの一つが錆びを防ぐということです。
気化性の防錆剤が金属製品の表面にムラなく付着していくため、空気中の水分や塵などをバリアします。
気化性防錆紙のメリット2:汚れない
防錆製品には、防錆紙以外に防錆油が挙げられますが、塗布と拭き取り作業の際に、粒子の飛び跳ねによって作業者や作業環境が油で汚れてしまいます。
一方、気化性防錆紙は、防錆剤の塗布や拭き取り作業がないため、手元が汚れることがなく、作業の安全性確保にも繋がります。
気化性防錆紙のメリット3:作業工程が短い
気化性防錆紙と防錆油の単価自体は、防錆油がやや安価ですが、防錆油は塗布・脱脂、乾燥の作業工程が必要であり、その分コストと人件費が発生します。
製品を多く梱包する必要があるケースの場合には、作業工程が短い気化性防錆紙を使用することが結果的に作業効率を向上させます。
山陽製紙が扱う気化性防錆紙について
ここで、山陽製紙が扱う代表的な防錆紙についてご紹介します。
山陽製紙では、クレープ紙を利用して防錆紙を製造しています。
クレープ紙とは、紙に刃を充ててシワをつけ、紙に強度と伸縮性を付加したものです。工程順序により、紙を抄きながらシワをつける一次クレープ紙と、紙を作ってから後工程でシワをつける二次クレープ紙に分類することができますが、当社のクレープ紙は前者の一次クレープ紙です。
当社の独自技術(糸入り一次クレープ紙)により製造された防錆紙は、ステンレスや鉄、電線の梱包・防錆資材として、多くの現場で使用されています。
山陽製紙では、防錆紙用の紙を製作してから、専門業者に依頼して防錆用の薬剤を紙の表面に塗布しています。その後、当社でスリット加工を施し、バリア性の高い包装紙で梱包して製品として出荷しています。
防錆紙は、梱包する金属の種類によって防錆剤を変えなければならず、適したものを選ばなければ逆に金属の品質を落としてしまうことになるので注意が必要です。
どの防錆紙を選択すれば良いか迷われた際には、山陽製紙にご相談ください。梱包する金属に適した防錆紙をお選びします。
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。
環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。
小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
製紙・商品開発の相談がしたい
工場見学をしてみたい
…など、ぜひお気軽に山陽製紙にお問い合わせください。
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。- 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
- 製紙・商品開発の相談がしたい
- 工場見学をしてみたい
執筆者:山陽製紙
1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。