「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」 その3

カテゴリー: コラム , よみもの 2022.08.04

「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」その3
山陽製紙(株)の経営ビジョンに影響を与えた「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」を紹介する第3回。

「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」その2はこちら

自然と生体に学ぶバイオミミクリー

自然と生体に学ぶバイオミミクリー
ISBN 978-4-274-50065-7
Benyus, Janine M(著), 吉野 美耶子(訳), 山本 良一(監訳),
発行:オーム社

「静けさの前のあらし」

久しぶりに「自然と生体に学ぶバイオミミクリー」を開きました。
ある論文によると、地球上には870万種もの生物種が存在するというのですが、そんな「地球」と870万分の1である「人間」という生物の存在について、素直に見つめなおすことができる本です。

今日開いたページの見出しには「静けさの前のあらし」と書いてありました。「あらしの前の静けさ」ではなく?
「人間」が今直面しているのは、産業革命以後我が物顔に地球の資源を掘り起こし使い捨ててきたその付けが回ってこようとしている現実ではないのか?人間の活動のお陰で絶滅する種が後を絶たない。そのお陰で生態系のバランスが崩れる本当の恐さに誰も気づいていない「静けさ」ではないのか?

生物学上の先祖にこだまを返すのは実に賢明と思われるのに、人間は自立の衝動にかられて、それとはまったく逆方向の旅路を歩んできました。その旅は一万年前の農業革命とともにはじまりましたが、その時人間は、狩猟と採集に依存する波乱に富んだ生活から解放され、独自の貯蔵庫に食料を蓄えるようになりました。
さらに科学革命とともにペースは早まり、フランシス・ベーコンのことばを借りれば、人間は「自然に拷問を加えてその秘密を吐き出させる」すべを会得します。そしてついには、産業革命のエンジンを加速するためのアフターバーナーによって、また高く炎を舞い上がらせると同時に、機械が人力にとって代わり、人間はこの世界を激しくゆり動かすようになります

出典:Janine M. Benyus(著)、山本 良一(監訳)、吉野 美耶子(訳)「自然と生体に学ぶ バイオミミクリー」、オーム社、2006年、17ページ

この本は2006年に発行されています。今から16年前。このころはまだ現在のように地球の温暖化、異常気象といった言葉が巷には溢れていませんでしたが、今人間がやり続けていることに警鐘を鳴らすような文言が並びます。

いかなる生物種もあらゆる資源を占有することはできず、必ず他の生物種と分かち合わなければならないのです。この法則を無視する生物種はどれもみな、最後には、その増大と発展の基盤である生物群集を崩壊させる結果になります。

出典:Janine M. Benyus(著)、山本 良一(監訳)、吉野 美耶子(訳)「自然と生体に学ぶ バイオミミクリー」、オーム社、2006年、17~18ページ

世界の人口は78億人を超えました。2030年には85億人に達すると、UNIC(国際連合広報センター)は伝えています。
一方で、「このままこれまでと同様に大量生産、大量消費、大量廃棄を続けていると、地球は何個あってもたりない。」と、まるで地球をゴミ箱のようにたとえる論調もあります。まるで地球上には人類しか生存していないかのように。

自然科学のライターとして知られる著者のジャニン・ベニュスは冷静に分析します。

はじめは広大な世界のなかの小規模な個体群であった人間は、その数とテリトリーを拡大し、ついにはその世界を破壊寸前にまで追い詰めています。その個体数は限度を超えて増大し、その生息地は持続不可能に陥っています。

出典:Janine M. Benyus(著)、山本 良一(監訳)、吉野 美耶子(訳)「自然と生体に学ぶ バイオミミクリー」、オーム社、2006年、18ページ

このような現状をどうとらえるかは、一人一人様々な考え方があると思います。しかし、異常気象が当たり前になり、毎年それに起因した災害が増えるにつれ、コロナパンデミックと同様、それと「共存」する生活を選択し始めている人も増えています。つまり、もう元には返らないことを理解し新しい生活スタイルを積極的に創造していくという生き方。

人間が限界に近づいているという状況は、もしみずからそれを認めるなら、問題解決のための新しい局面、つまり、地球をコントロールするよりは、むしろそれに順応する段階に飛躍するチャンスになるかもしれません。今われわれがめざす変革は、一見きわめて遅々としたものであっても、新しい現実的革新の核となり得るのです。

出典:Janine M. Benyus(著)、山本 良一(監訳)、吉野 美耶子(訳)「自然と生体に学ぶ バイオミミクリー」、オーム社、2006年、18ページ

現在の地球上の現象を「あらしの前の静けさ」として捉えるのではなく、「静けさの前のあらし」ととらえるジャニン・ベニュスやバイオミミクリーの科学者達の言葉にしっかり耳を傾けたいと思います。

この地球から逃げ出すのではなく、故郷に帰る旅をはじめ、ハチがランの花に誘導されるごとく、自然の道案内で無事に帰還をはたせるのではないかという希望があります。

この記事を書いたひと

原田千秋 山陽製紙株式会社 専務取締役

原田千秋山陽製紙株式会社 専務取締役

広島県呉市出身

広島大学教育学部卒業後、同じ大学のマンドリンクラブで同期だった原田六次郎氏(現:山陽製紙株式会社 代表取締役社長)と結婚。
中学校の教員を経て、1992年、経理等を担当するため山陽製紙の社員となる。
瀬戸内海の島育ちにも関わらず、水泳もできない運動音痴。
耳元に広がる波の音や、山が黄金色に染まるみかん畑などが心の原風景。
山陽製紙(株)の経営ビジョン「地球の財産を生かし、自然と共に生きる永続企業」もその様な原風景が背景にある。
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