廃棄物の中で再利用できるものは何?具体的な方法も詳しく解説
廃棄物の再利用は、地球環境を保護するにあたって大きな意味を持ちます。というのも、廃棄物の再利用はごみ処理の際に発生する温室効果ガスを削減するだけでなく、ごみの埋め立て地を作るための森林伐採を減らすこともできるからです。だからこそ、廃棄物の再利用について理解を深める必要があるでしょう。
そこで今回のコラムでは、廃棄物の中でも再利用できるものとできないものの違いや廃棄物を再利用する具体的な方法などについて解説していきます。廃棄物の再利用がこれからどんな成長を遂げていくかについても触れていくので、この記事を読むことで、より深い知識が得られるでしょう。廃棄物の再利用を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
そもそも廃棄物は何を指す?
まず、廃棄物という言葉が具体的に何を示すのかについて見ていきましょう。一般的な認識において、廃棄物は「ものの価値がなくなってしまい、他者に譲渡することが難しい不用品」「処分しなければならないごみ」などを指す言葉です。
廃棄物の量が増えると焼却や埋め立ての際に温室効果ガスが発生し、地球温暖化の促進や海洋の汚染などが懸念されます。そのため可能な限りその量を減らすことが必要だとされています。
なお、廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」といった2つの種類に分類することができます。
- 産業廃棄物:事業活動から発生した廃棄物のうち、「燃え殻」「廃プラスチック類」「がれき類」などをはじめとする20種類のこと
- 一般廃棄物:産業廃棄物に含まれない廃棄物のこと
ものがあふれている現在の状況で環境保護を進めるためにも、産業廃棄物・一般廃棄物の量を減らし、より環境負荷の少ない社会を目指すことが重要です。
廃棄物を再利用する利点・欠点は?
環境保護に向けて、今後は廃棄物の量を減少させる必要があると述べてきました。ここからは、廃棄物の減少に有効であるとされる「再利用」について詳しく解説していきます。
ここでは、廃棄物を再利用する際の利点と欠点について説明しますので、ぜひ参考にご覧ください。
廃棄物を再利用する利点
廃棄物を再利用することで、以下のような利点を期待できます。
- 温室効果ガスの削減により、地球温暖化が防止できる
- 埋立地を大量に用意する必要がなくなり、森林伐採を減らすことができる
- 廃棄物の再利用にかかる費用が削減できる
- 持続可能な社会への意識が広がる
- 木やプラスチックなどの資源を無駄にすることなく、有効活用することができる
この中でも特筆すべきポイントは、「持続可能な社会への意識が広がる」という点です。
なぜなら廃棄物を焼却・埋め立てするのではなく再利用することが当たり前になれば、資源を有効活用可能な循環型社会が形成できるからです。廃棄物削減の取り組みを継続することで、長期的に自然と調和した社会の構築が可能になるでしょう。
循環型社会そのものの意味や、循環型社会形成のために企業が取り組める活動については「循環型社会のために企業や個人ができることは?製紙業界の取り組みについて」で解説しています。
廃棄物を再利用する欠点
廃棄物の再利用には、利点だけでなく以下のような欠点も存在します。
- 廃棄物の洗浄や分別には時間と労力がかかる
- 再利用の方がより多くの費用が発生するケースもある
- 再利用を続けることで素材が劣化してしまう
しかし、廃棄物の再利用における欠点は、技術の進歩や人々の認識の変化によって克服できる可能性があります。先述したように、得られる利点の価値も非常に大きいので、廃棄物の再利用に向けて行動する方が未来につながるでしょう。
廃棄物の中で再利用できるもの・できないものは?
廃棄物の再利用には多くの利点があるため、積極的に取り入れるべきだということがわかりました。しかし、すべての廃棄物が再利用できるというわけではありません。
今後関連事業を展開する際に、把握しておくと役立つ「廃棄物の中で再利用できるもの・できないもの」について解説していきます。
廃棄物の中で再利用できるもの
リサイクルをはじめとした再利用が推奨されている廃棄物を、下記に一覧としてまとめました。
- ペットボトル類
- アルミ缶、スチール缶
- ビン類
- 電化製品
- 紙類
- 衣類
これらは地方自治体や商業施設などが回収しているケースも多いため、社会全体で広く再利用が進められている廃棄物です。
また、すでにこれらの再利用に取り組んでいる企業も多く、参考にできる情報やデータが豊富にそろっているという特徴もあります。よって、事業として再利用に取り組む場合、上記の廃棄物から始めると良いでしょう。
廃棄物の中で再利用できないもの
続いて、再利用が難しい廃棄物の一覧を紹介します。
- 汚れがひどく、洗浄が困難なもの
- 耐熱ガラスや乳白色のガラスなどの一部のビン類
- プラスチックや金属(紙に混ぜて再利用する場合)
- 油分が多いもの(紙に混ぜて再利用する場合)
「再利用後に製造される製品のクオリティが均一にならないから」「廃棄物を加工する際に手間がかかるから」などの理由から、再利用ができない廃棄物は意外と多いものです。よって、これらは自治体の規定に沿って適切な方法で処分しましょう。その分、推奨されている廃棄物の再利用を進めていくことが大切です。
廃棄物を再利用する方法は?
再利用を進めるべき廃棄物の内容が把握できたあとは、廃棄物を再利用する具体的な方法について学んでいきましょう。ここでは代表的な方法として、「リサイクル」と「アップサイクル」の2種類を取り上げます。
リサイクル
リサイクルは、廃棄物を新たな形に作り変えて再利用する方法です。リサイクルは「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」「マテリアルリサイクル」の3種類にさらに細分化できます。それでは、それぞれの意味や例について詳しく説明します。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、廃棄物を化学的に分解してから再利用するリサイクルのことを指します。たとえば、「プラスチック→燃料」「糞尿→ガス」などがケミカルリサイクルの主な例です。
ケミカルリサイクルは、不純物の混合により再利用が難しい場合でも使用しやすい手法であるので、近年注目度が高まっています。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、廃棄物を焼却処理した際に排出される熱をエネルギーとして再利用するリサイクル方法です。「施設の暖房設備」「温水プールの稼働」などが、エネルギー利用先の主な例に挙げられるでしょう。
サーマルリサイクルはエネルギー不足の対策にもつながるため、さらに認知度が高まることが期待できます。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは廃棄物を原料に戻してから再利用する方法です。これまで紹介してきた3種類の中で、マテリアルリサイクルは日本で特に知られているリサイクル方法だといえます。
また、「ペットボトル→別のプラスチック製品」「アルミ缶→新しいアルミ缶」などが主なリサイクル例です。消費者からの知名度も高いので、今後もマテリアルリサイクルはさまざまな企業で導入されていくでしょう。
アップサイクル
アップサイクルは、「廃棄物の価値をさらに高める形で作り変えて再利用すること」という意味を持つ言葉です。
リサイクルと似ているように思えますが、アップサイクルは「価値を高めること」を重視していることが特徴的だといえます。具体的なアップサイクルの事例を、以下にまとめました。
- 廃棄予定の野菜かすを新しい食品に再利用する
- 商品の製造時に出た不用な茶葉を紙に抄き込んで再生紙を作る
- 余ってしまったレザー素材から革製品を作る
なお、独自性の高い製品に再利用することで競合他社との差別化が実現できるところが、アップサイクルにおける大きなポイントです。アップサイクルは世界的にも関心が高まっているので、廃棄物の再利用における選択肢の一つに入れておくと良いでしょう。
リサイクルとアップサイクルの違いについてより詳しく知りたい場合は、「アップサイクルとリサイクルの違いは?|リメイクなど似ている用語も紹介」を参考にご覧ください。
廃棄物を再利用する際のポイントは?
廃棄物を再利用するにはリサイクルやアップサイクルを用いることになりますが、その際に気をつけるべきポイントがいくつか存在します。ここでは以下の3つを取り上げるので、これらを意識しながら再利用を進めましょう。
- ルールに沿って再利用の手順を踏む
- 自社ならではの要素を盛り込む
- 廃棄物そのものを減らす活動も行う
ルールに沿って再利用の手順を踏む
廃棄物を再利用するにあたって、地方自治体によって決められている細かなルールを必ず守るようにしましょう。
もし具体的な手順を間違えてしまうと、予定通りに再利用が進められなくなってしまうリスクがあります。そのため、不明点がある場合は該当する団体や施設に連絡し、正しい情報を得ることが重要です。
自社ならではの要素を盛り込む
事業として廃棄物の再利用を行う場合は、競合他社にはない要素を製品やサービスに盛り込むことが大切です。そうすることで、廃棄物の再利用を進めながらビジネス面でも大きな反響が得られるでしょう。
そのためにも、事業内容を検討する前に、現在どのような事業が存在するのかリサーチしておくことが必要です。
廃棄物そのものを減らす活動も行う
廃棄物を再利用するだけでなく、廃棄物の発生量そのものが削減できるように行動することも重要です。なぜならそうすることで、総合的なごみの量を効果的に削減することができるからです。
なお、廃棄物の発生量を削減することは「リデュース」と呼ばれており、リサイクルと同じように重要視されています。
具体的には、「余分なものを購入せずに必要な量だけにとどめること」「使い捨ての商品をなるべく使わないようにすること」などを意識しましょう。
関連記事:リデュースとは?リサイクルとの違いや取り組む意味について
廃棄物の再利用はこれからどうなる?
SDGsの重要性が今後も高まると予想できるため、廃棄物の再利用もさらに推進されていくでしょう。また、AIの発展によって、廃棄物の分別をはじめとした各種作業に取り組みやすくなることも推測されます。
地球環境保護に向けて迅速な対応が必要であることを考えても、なるべく早めに廃棄物の再利用を導入する方が良いでしょう。
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執筆者:山陽製紙
1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。