循環型社会のために企業や個人ができることは?製紙業界の取り組みについて
現在問題となっている気温上昇やエネルギー資源の枯渇などの環境問題を改善していくためには、循環型社会となるよう個人でもできることを行うことが大切です。
そのため、近年ではSDGs(Sustainable Development Goals)と呼ばれる持続可能な社会の実現を目指すための17の目標が国際目標として掲げられました。
木々の伐採を行い、有限な資源を消費する製紙業界も、紙の原料調達・製造から廃棄、そして再利用までの一連のサイクルの中で、資源の消費量と廃棄量を減らし、後世に残す循環型社会のための努力は必要不可欠だと言えます。
今回は、このようなサイクルを推進する循環型社会の中で、私たち山陽製紙の取り組みや身近なできることをご紹介していきます。
目次
循環型社会とは
循環型社会とは、有限な資源を効率的に利用し、廃棄量を減らしながら廃棄物を再利用して、有限な資源が枯渇してしまわないように循環させ続ける社会を意味します。
例えば環境負荷の大きい製紙業界において、
①木々を適切に伐採する
②使用した紙や古紙を原料または原料の一部として再利用して、紙をつくる
③植樹や森林保護などの活動を通して、将来の資源を増やす
といった点を意識した循環のサイクルが挙げられます。
そして同様に、このサイクルの成立だけではなく、サイクルの過程で発生する環境負荷(CO2、発生廃棄物)をできる限り削減することが重要です。
循環型社会のために企業ができること
商品を大量生産・大量消費・大量廃棄する傾向がある企業においては、それぞれの業種で循環型社会への積極的な参画が求められます。
今回は私たち山陽製紙が、「紙」に関して企業ができることの一例についてご紹介します。
商品ロスを最小化する生産計画
こちらは製紙業界での話になりますが、必要以上の森林の伐採をやめて、過去の消費量や需要量に基づいた適切な量の伐採を行うことが大切です。
特に近年ではデジタル化、ペーパーレス化の傾向があることから、従来と同様の資源の採取は必要がなくなると考えられます。そのため、今後は業界全体で生産量の見直しが必要となってきます。
製造過程でのエネルギー消費削減
紙の製造過程において、消費電力や発生CO2を最小化する省エネ機器の採用や太陽光発電などの電気を創り出す「創エネ」によって、石油燃料の消費を抑えることが必要です。
また、生産量を調整することで工場の稼働時間も短縮できることから、社会全体の需要に応じた生産計画との連携が必要となります。
印刷量の削減
各企業においてオフィス内の印刷量を減らすよう取り組むことは非常に効果があります。
オフィス内の複合機内には印刷カウンターが備わっており、印刷の枚数を知ることができます。事業所ごとやチーム内で印刷枚数の限度を決めて、テスト印刷や予備印刷をできる限り行わないようにするなどでも、利用するコピー用紙の削減につながります。
また、会議などでは、データでの個別への事前周知やオンライン化を図ることにより、紙の資料を減らすことができます。
このように、オフィス内において部署ごとに印刷量を減らす取り組みを積み重ねることで、結果として会社全体での使用紙量を減らすことができます。
ごみの分別を徹底する
紙などの資源ごみは、適切に廃棄し回収を行うことで、再生紙として再利用することができます。
オフィス内においては、ゴミ箱やごみ倉庫内で一般ごみと資源ごみを明確に分別することで、容易にごみの分別ができます。
また、印刷ミスや印刷後の廃棄紙は、スタッフの手が届きやすい場所に集約することで、裏紙として印刷でき、新しいコピー紙の使用量を削減することも可能です。
循環型社会のために個人ができること
先ほどは企業がオフィス内でできる循環型社会への取り組みをご紹介しましたが、ここでは個人ができる身の回りの実践例をご紹介します。
3R、5Rの実践
使用資源を、「①減らす」「②再利用する」「③リサイクルする」「④使わない(拒む)」「⑤修復して使う」などの取り組みから、それぞれの英語の頭文字を取って、3R(①から③)や5R(①から⑤)が循環型社会への取り組みとして謳われています。上記について身近な実践例と合わせてご紹介します。
①Reduce(リデュース):使用資源を減らす。
例)・車で出かけるのをやめて、自転車で出かける(ガソリン使用量の削減)
・冷蔵庫の開閉回数を減らす、TVを使用しないときは主電源を切る(使用電力・待機電力の削減)
・家族で食べられる量の食材を買う(食品ロスの削減)
②Reuse(リユース):使用資源を再利用する。
例)・印刷に失敗した紙を小さく切ってメモ帳として使う
・お菓子などの箱を小物入れとして使う
・上の子がサイズアウトした洋服を下の子に着せる
③Recycle(リサイクル):使用資源をリサイクルする。
例)・使用済みの牛乳パックや段ボールをまとめて捨てる(資源ごみを分別して捨てる)
・プリンターのインクカートリッジを可燃ごみに捨てず、メーカーの回収方法に準じて捨てる
④Refuse(リフューズ):資源の利用を拒む。
例)・コンビニやスーパーでポリ袋をもらわずエコバックを使う
・外食時に割り箸を使わずマイ箸を使う
・本屋さんで書籍購入時のブックカバーを貰わずマイブックカバーを使う
⑤Repair(リペア):修復して使う。
例)破れたシャツやジーンズをオシャレにリメイクする
アップサイクルの実践
元の製品に新たな付加価値を与えて生まれ変わらせるのがアップサイクルです。現在日本においても積極的なアップサイクルが実践されてきています。
例えば、ペットボトルを利用したメガネフレームや、破棄されたタイヤチューブがバッグや靴に生まれ変わったり、古材が家具に変身したりと、特にファッション業界や家具業界では続々と新たなアイデアを元にアップサイクルが実践されています。
その中で、個人でできることと言えば、消費者としてアップサイクルに取り組む企業を選択することです。環境問題に積極的な企業の製品を選ぶことで、私たちの消費活動がエシカルなものとなり、生産から消費までの物の流れが人や社会、環境にやさしいものへと変化していきます。
山陽製紙の循環型社会のための取り組み
製紙業界では、紙資源そのものの有効活用はもちろんですが、多量の電気や熱の使用、そして森林の伐採といった環境負荷の大きい製造過程を経る中で、循環型社会に対する正しい知識と配慮が必要だと考えています。
私たち山陽製紙は、循環型社会に貢献できるような紙づくりを実践しています。その取り組みを以下にご紹介します。
活性炭処理による高度排水処理設備
製紙業では多くの水、そして薬品も使用するので、工業排水をそのまま川へ排出することはできません。
山陽製紙では、隣接する男里川(おのさとがわ)の地下水資源を使用しているのですが、凝集沈殿処理を行い、水の汚染具合の指標でもあるCOD(化学的酸素要求量)の数値を基準値以下にして放流しています。
2018年から活性炭ろ過方式浄水処理施設をはじめとした、用途に応じて3段階のろ過処理を行うことができる高度排水処理設備の稼働も開始しました。
これによって、排水によって既存の生態系を破壊しない、魚が住めるレベルまでの浄化処理が可能となっています。
廃棄物の有効利用
原料製造工程の際に発生する以下の廃棄物を独自手法で有効利用・再利用を行っています。
①汚泥(製紙スラッジ)
原料製造工程の際に不純物として除去され、搾り機で水分を絞られた汚泥(製紙スラッジ)は、セメント業者にて増量剤としての二次利用に活用されています。
②スクリーン粕(フィルムなど)
汚泥と同様に不純物として除去されたスクリーン粕(フィルムなど)は、以前はサーマルリサイクル(熱回収)の手法を用いていましたが、近年ではこれらもセメントの増量剤としての二次利用に活用しています。
これらの取り組みによって、産業廃棄物処理にかかる費用は従来の1/2となっています。
③社内で排出された紙資源の循環
社内で出た不用なコピー用紙や、雑がみ類を分別して収集し、再生紙の原料にしています。
PELP!(ペルプ)
PELP!(ペルプ)とは、資源としてまだ使える紙が捨てられているのを何とかしたいという思いから生まれた当社独自のサービスです。
不用なコピー用紙を専用回収袋「PELP! BAG(ペルプバッグ)」に入れて山陽製紙に送ることで、今まで捨てられていた紙が、再生紙「PELP! PAPER(ペルプペーパー)」として生まれ変わります。
さらに、その100%再生紙を使って「PELP! PRODUCT(ペルププロダクト)」を作成したり、PELP!パートナー会員様同士の交流イベントへ参加することができます。
PELP!を通して一社では解決できない課題に対してもパートナーシップを構築し、解決する糸口を発見する取り組みを進めています。
山陽製紙と循環型社会のためにできること
循環型社会のために個人や一企業でできることは小さな一歩でも、個人が企業と、そして企業と企業とが手を取り合うことで、地球環境にやさしい大きなサイクルが生まれることになります。
法人のお客様においては、先ほどご紹介した「PELP!」への参加促進や、廃棄物を活用したオーダーメイド紙の作成などを通して、循環型社会に貢献することができます。
例として、オンデマンドプリントサービスのキンコーズ・ジャパン株式会社様(※リンク挿入:https://www.kinkos.co.jp/biz/solutions/document/pelp/
)や「レトロ印刷」を運営する株式会社JAM様(※リンク挿入:https://jam-p.com/?pid=160566063)では「PELP! PAPER」を用紙ラインナップに加えて頂いており、より多くの方に資源循環に気軽に取り組んでいただけるようになりました。
また、個人のお客様においては、山陽製紙が製造する工業用クレープ紙「crep paper」から生まれるcrep(クレプ)の商品を使用していただくことや、PELP! PAPERを採用されている企業様の商品を選択することも循環型社会への取り組みの一歩としておすすめです。
※工業用クレープ紙「crep paper」から生まれた、おしゃれで楽しいアイテム「crep」はこちら(※リンク挿入:https://www.sanyo-paper.co.jp/products/crep)
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。
環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。
小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
製紙・商品開発の相談がしたい
工場見学をしてみたい
…など、ぜひお気軽に山陽製紙にお問い合わせください。
紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙
山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。- 小ロットでも発注できる製紙メーカーを探している
- 製紙・商品開発の相談がしたい
- 工場見学をしてみたい
執筆者:山陽製紙
1957年の設立以来、60年余り大阪・泉南市で再生紙に携わってきた紙づくりのプロフェッショナル集団です。 工業用クレープ紙の製造のほか、廃棄されてしまう製造副産物やオフィス古紙などを紙に抄き込みアップサイクルした「オーダーメイド再生紙」や、オフィス古紙の回収や再資源化サービスの「PELP!」など、限りある資源を活用し、循環型社会を実現するため日々取り組んでいます。 小さな製紙メーカーだからこそできる600kgからの小ロットの製紙で、お客様の想いに寄り添った紙づくりを実現していきます。