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再生紙とは?平安時代から続く紙のリサイクル文化

カテゴリー: コラム , コラム 投稿日:2022.06.03 / 最終更新日:2022.07.14
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執筆者MU

再生紙とは?平安時代から続く紙のリサイクル文化

近年、地球環境や資源問題への意識が高まりを見せる中、資源を有効活用する再生紙へのニーズは高まっていますが、実は既に日本では古くから紙をリサイクルして活用しており、資源を有効活用する文化が根付いています。

そこで今回は、日本では一体いつ頃から再生紙を利用していたのか、そもそも再生紙とは何なのか、そして現代の再生紙の作り方とはどんなものなのかなど、再生紙のスペシャリストでもある私たち山陽製紙の再生クレープ紙を例にして詳しくご紹介します。

再生紙とは?

再生紙とは、一度使用された古新聞や段ボールなどの古紙をほぐして繊維状にし、再度すき直して作った紙のことです。

現在、日本においては古紙の配合率に規定がないため、古紙がわずかにでも混じっていれば「再生紙」と定義されており、古紙の配合率が高ければ高いほど、インクなどの不純物などによって紙に色が付くのが特徴です。

紙ごみとして捨てられるはずだった古紙をリサイクルすることは、資源の有効活用になるだけでなく、廃棄物の減量化や森林伐採量の削減にもつながるため、近年では国や官公庁などでも再生紙の利用を推奨しています。

再生紙とは?

再生紙の始まりは平安時代から

実は、日本では古くから「再生紙」の概念があり、その始まりはなんと平安時代から。

日本の伝統技術でもある和紙もその一つで、紙が非常に高価なものであった平安時代に貴族が使った和歌や書などで使われた後の紙を集めて「古紙の漉き返し(すきかえし)」と呼ばれる紙のリサイクルを行い、「薄墨紙(うすずみがみ)」という再生和紙を作っていたそうです。

当時はまだ紙は高価なもので、庶民には手が届くものではなかったのですが、その後、紙の値段が下がって紙が広く普及したのは江戸時代に入ってから。
紙の生産量が増加するにあたって、障子屋や提灯屋、傘屋などの紙を利用する職業が増え、紙は江戸の人々の生活に欠かせないものとなっていきました。

この頃から、使用済みの古紙を集める「紙屑屋」という商売が現れ、その紙屑屋が集めた古紙は、古紙問屋から漉き返し業者に売られて再生紙になるという現代の紙のリサイクルにも通じるシステムが確立されていたといいます。

再生紙に利用できないものとは?

再生紙の原料となる古紙には、新聞や雑誌、段ボールや牛乳パックなど、さまざまな種類がありますが、実は、全ての古紙がリサイクルできるわけではなく、紙の種類や加工方法によっては再生紙の原料とならないものもあります。

利用できないもの

  • 油分が多い紙(食品残渣がついた紙など)
  • ラミネート加工やコーティングなどの特殊加工がされた紙
  • 紙でないもの(石、ガラス、土砂、金属、木片、布類、プラスチックなど)

…など

例えば、ラミネート加工などの特殊加工がされた紙は、原料となる繊維の取り出しに高いコストがかかるため、当社での再利用はしていません。また、油分が多く付着した紙に関しても、排水負荷による影響が強く当社の再生クレープ紙においてはシワが均一につかない、強度が下がるなどの問題が出てくるため基本的に再利用には不向きです。

ただし、そのままでは紙にできないものでも細かく砕いて配合量を調整することで、紙に漉き込むことができる場合もあるため、古紙をリサイクルする際には種類ごとに分別し、再利用できないものが混ざらないようにすることが大切です。

再生紙の作り方とは

再生紙の作り方とは

再生紙とは古紙をほぐして繊維状にしたものをすき直して作った紙のことですが、実際にどうやって作るかは知らないという方も多いはず。

そこで、私たち山陽製紙が製造する再生クレープ紙の作り方をご紹介します。

手順①:原材料の溶解

段ボールや茶クラフト紙といった古紙を主原料として使用し、パルパーという大型のミキサーのような機械で水と原材料を混ぜ合わせて溶解します。

手順②:異物の除去

次に、古紙に含まれるフィルムやホチキスなどの異物を取り除くと同時に、原料を洗って水を絞ります。
そして、溶かした原料に必要な薬品(撥水剤、紙の強度向上)や染料(繊維へ着色)を添加します。

手順③:叩解

叩解機(こうかいき)という機械で原料を更に細かくします。(叩かれ、ほぐれた繊維が毛羽立ち結合が促された状態をフィブリル化と呼びます)
2枚の刃の間を通りながら、きめの細かい原料になっていくことで、種類別に製紙に適した性質のパルプ繊維を作り出すことが可能になります。

手順④:シートの作成

手順③までで作られた原料をシートにしていきます。
二層の水槽にて円網(まるあみ)と呼ばれる網ですくい上げ、1枚(2枚重ね)のシートにしていきます。

手順⑤:シワの形成

プレス脱水された湿紙にクレープと呼ばれるシワを付けます。
シワはドクター刃というものに湿紙をあてていく事で形成されます。

手順⑥:乾燥

シワを形成した後は、アイロンを円筒型にしたようなドライヤーで、湿紙の表と裏を交互に乾燥させていきます。

手順⑦:再生クレープ紙の完成

乾燥してでき上がった紙のシートを、ポープリールと呼ばれる機械で巻き上げ、原紙が完成します。

そして、幅と長さを受注内容に合わせて切り分けてから出荷するのですが、ここで出た製品以外の端材は全て原料エリアに戻され、再利用されます。

再生クレープ紙再生クレープ紙

今回、作り方をご紹介した水に強く独特の風合いが人気の工業用クレープ紙については、こちらの
「crep」ページでも詳しくご紹介しています。

紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙

紙創りを通して喜びを共有する山陽製紙 山陽製紙は創業以来、紙と共に歩んできた再生紙のスペシャリスト集団です。 環境のみならず、様々な社会的な課題に真摯に向き合い、自社の特徴を活かしながら解決のために挑戦する企業のお役に立ちたいと考えています。
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